ようこそ社会学類へ

   社会学類長 明石 純一

社会学類は、私たちが生きる社会を多角的に認識し、総体として把握するための能力を身に付ける環境を提供しています。社会学類は四つの主専攻、すなわち社会学、法学、政治学、経済学から構成されています。その個々の学問のルーツや基礎的な考え方を知ることから、社会学類での学びが始まります。社会科学の幅広い思想や理論に触れ、分析の方法を知り、研究実践への準備をまずは進めるのです。異なる学問を横断的に学ぶこと、月並みな言葉で表せば「学際性」を重んじることの重要性は、言うまでもありません。隣接しながらも性格を異にするディシプリン(専門分野)に根差した事象の見方、語り方を覚えることは、極めてエキサイティングで高度な知的体験であることを、私は強調します。

挙げればきりがないほどの未解決な社会的課題を抱えるに至った現代は、先行きも不透明な時代です。それらの問題を構造から解明し、さらには解決法を見出したいのであれば、特定の領域に偏った知識では足りません。社会、法、政治、そして経済は、互いに規定し、介入し合っています。さらに私たちが生きる社会では様々な価値観や志向性が混在し、せめぎ合っています。この結びつきと多様性はもはや自明であり、あまりに常識的といえますが、その常識をまるごと引き受け、諸問題に正面から挑む知性なくしては、今日の社会を公正に捉え、今より生きやすい将来の社会を構想する道は拓けないのではないでしょうか。それは、現状に追従しない健全な批判精神と、更新を躊躇しない柔軟な思考回路を培うことでもあります。

社会学類は、社会の理解に対するこのような基本姿勢を尊重しながら、学生みずからが望む専門的な能力の獲得を求めます。社会学類が重きをおく学際性の強みは、固有のディシプリンを高い水準で体得してこそいかんなく発揮されるのであり、本学類が目指すところです。このタフな学びの場に率先して挑戦してくれる若者を、社会学類は歓迎します。

概要

筑波大学は、百余年の伝統をもつ東京教育大学を引き継ぎ、1973年10月に「新構想」大学とし て、学際的な教育・研究と社会的にも国際的にも開かれていることを目的に開学し、2014年には、40周年を迎えました。長い歴史をもつと同時に、新たな伝統を創りつつある大学といえましょう。

東京の近郊、関東平野の中ほど、筑波山の南に広がる筑波研究学園都市(茨城県つくば市)の一角に、全国でも有数の広大なキャンパスを占める本 学の、他大学と異なる特徴は、「学部制に代えて、学生を教育するための組織である学群・学類を設けたこと」と、「前期2年の教養学部を廃止して、入学直後から大学としての専門教育を開始し、外国語や総合的な教養科目を効率的に配置したこと」です。

筑波大学社会学類は開設以来、人文学類、自然学類とともに第一学群を構成してきましたが、社会情勢の変容や社会が求める大学像の変化などを踏まえ、2007年度から社会・国際学群に属する2学類の1つとなりました。社会学類は40年以上も積み重ねてきた成果を大事にしながら、新しい学群をともに構成する国際総合学類と協力しあって、社会科学分野における総合的・専門的な教育を一層充実させることを目指します。たとえば社会学・法学・政治学・経済学の各主専攻では、必要に応じて国際総合学類との共通科目が設定されており、社会学類生は国際総合学類の科目を履修しながら、社会学類の卒業に必要な単位を取得することができます。社会学類生はまた、社会学類の科目だけでなく、さまざまな他学群・学類の授業を受けることも求められます。

社会学類は、社会科学を総合的に教育することを目的とし、同時に専門の内容を深めるために3~4年次は社会学・法学・政治学・経済学の4主専攻にわかれます。他の大学に当てはめていえば、社会学部(ないしは文学部社会学科)、法律学部(法学科・政治学科)、経済学部にそれぞれ所属しなが ら、 他学部(他主専攻)の勉強をすることも可能、かつ必要というわけです。

人間はともすると、「深ければ狭く」、「広ければ浅く」なりがちですから、ひとつの専攻を深く、かつ他の専攻を広く勉強することは、決して容易なことで はありません。しかし、現代の複雑な社会問題はそのような勉強を要求していますし、またそれに応える勉強は楽しいものでありましょう。

例えば、主専攻分野の勉強を深めるために、2~4年次においては、 少人数方式の入門演習や演習(ゼミナール)が設けられ、活発な討論の「場」となっています。

また、指定の「教職科目」を履修することにより、教員の資格が得られます。 社会学類で取得できる主な免許状(科目)は、高等学校1種(公民)です。

本学類には、学生が生きた学問をする場として、全国にも珍しい裁判員制度に対応した模擬法廷が設けられています。

社会学類と関係する大学院

社会科学と関係する大学院が筑波大学には多数設けられており、大学院に進学する学生もえています。社会学類と最も密接な関わりを持つものとして人文社会科学研究群(国際公共政策学位プログラム、国際日本研究学位プログラムなど)があり、その他に生命地球科学研究群、人間総合科学研究群、システム情報工学研究群、ビジネス科学研究群などがあります。

法学分野では、東京大塚に、社会人を対象とした法科大学院(ロースクール)が設置されています。

社会学類を卒業後、上記の大学院を経て、あるいは他大学の大学院(ロースクールを含む)を経て、大学やその他の研究機関、行政機関、法曹界、シンクタンク、マスメディアなどで専門知識を生かし研究を続けることが可能です。そうした多くの先輩が活躍しています。