政治学への招待

今日、私たちは政治の圧倒的な影響のもとに生活しています。実際、国際間でおこった一つの地域的なテロが全世界の市民をその渦中に巻き込み、政府が決定した一つの経済政策の失敗が、国民一人ひとりの生活のすみずみにまで浸透してきています。私たちが政治に関心をもたなくとも、政治が私たちをとらえてはなさないのです。 

政治学はこのような政治の世界を理論的、科学的、歴史的に分析し、理解し、同時に政治のあるべき姿を科学的、思想的に考察しようとする学問です。人間・集団・社会・国家に発生するさまざまな利害の対立と解決の様相を研究するこの学問にとって、「人間」に関する多様な認識と深い洞察力は不可欠であり、そのためには、幅広い教養と専門的な知識を吸収しようとする旺盛な知的好奇心が求められます。

教育方針と特色

政治学主専攻では、政治に関する基本的な概念、理論、歴史などを学ぶ基礎的な講義、入門演習を通して、政治学的なものの見方を身につけます。そして、専門科目、専門演習に入って政治理論、政治思想、政治外交史、国際政治等、それぞれ自分の関心領域を決め、研究を深めます。 

とくに演習は、少人数、自主的運営を原則とし、テキストの輪読や興味ある研究テーマについての報告、討議を行い、その成果をゼミ論文としてまとめることになっています。 

演習はまた、学生の企画、討論への参加を通して自立心を育てる場であるとともに、ゼミ活動を通じて、学生同士はもとより、教員との相互親睦を深め、社会人としてのあり方を具体的に実践する機会を提供してくれるでしょう。

将来の方向と進路

就職先は、マスコミ、金融、製造、不動産、サービス業、さらに国家、地方の公務員等、多岐にわたっています。最近では、企業の総合研究所や情報関連企業に就職する卒業生も出てきています。また、大学での研究を深めるために大学院に進学する者もいます。

教員紹介

明石 純一(あかし じゅんいち)
「国境を越える政治」「国際政治経済学」【移民・難民研究/アジア地域の国際人口移動に関する政策分析/グローバルガバナンス】

人(あるいは労働力)・物(商品)・金(資本)、そして情報があたかも自由に国の境界線を越えているかにみえる現代社会を、「ボーダーレス」と形容することが増えました。グローバル化により世界は「ひとつ」になる、ということも頻繁に語られます。しかしそれはどこまでが本当のことなのだろう。そもそも「国家」、「国境」、「国籍」、「国民」ってなんだろう。世界各国を放浪していた大学時代にふと頭に浮かんだこの疑問に取りつかれ、今もまだ回答を探している最中です。政治学を含む社会諸科学の習得と行動による実体験を通じて現代社会の変化と普遍性を理解すること、そのような学びの場をみなさんと共有したいと考えています。

鈴木 創(すずき そう)
「比較政治学」「アメリカの政治」 【選挙研究/議会研究】

新聞やテレビで政治が語られない日はありません。政治についての知識やイメージを得ることはそう難しいことではないでしょう。でも、常識とされていることが本当に正しいのか、常識とされる現象がなぜ起きているのか、ちょっと立ち止まって自分の頭で考えてみてください。有名な評論家がテレビで話していることも、大学の先生が本で書いていることも、批判的に考える姿勢を身につけましょう。

竹中 佳彦(たけなか よしひこ)
「日本政治論」「日本政治思想」「現代政治外交」【政治学・日本政治論(イデオロギーと政治意識、投票行動などの計量分析/戦後の政治外交史・思想史)】

政治とは、あらゆる人間諸集団に見られる、人間の相互作用によって生じる現象です。それを対象とする政治学は、古代ギリシャにまでさかのぼれる学問で、経済学や心理学、社会学、歴史学などの隣接諸科学の影響を受けながら発展し、時代に応じた役割を果たしてきました。複雑な現代の諸問題を解決するために、学問はますます学際化し、総合的な視点で物事を捉えて政策的に思考する人材が求められています。社会科学を広く学びながら政治学を学べる社会学類のメリットを生かし、そのような能力を培って下さい。

崔 宰栄(チェ ジェヨン)
「計量分析入門」【計量政治学】

社会をとりまく色々な問題に対し、自分なりの意見を持って積極的に取り組みながら、自分の価値や潜在的能力を導き出し、社会の一員として何ができるのか、何をすべきなのか、という問いに答えを見つけてみませんか。

南山 淳(みなみやま あつし)
「国際政治学」「国際安全保障論」 【国際政治理論/国際安全保障/グローバル化と国際紛争】

「ひとりを殺せば犯罪者となり、数百万人を殺せば英雄となる、数が殺人を神聖なものにするのです…」映画『殺人狂時代』(1947)のなかでチャップリン演じる連続殺人犯が発したセリフです。倫理的判断はどうあれ、人間の生命を理不尽(・・・)に(・)奪う行為という意味では,殺人と戦争の分岐は犠牲者の「数」に求めるしかないのかもしれません。ただ誤解してはならないのは,大量虐殺の結果、殺人が正当化されるわけではなく、「正当」とされる目的が戦争行為における殺人を合理化するという点です。
戦争目的が正しい否かの判断は、人によって,国によって、時代によって大きく変わってきます。アメリカ政府が、9.11同時多発テロの「首謀者」としてウサマ・ビン・ラディンを殺害した直後、アメリカ国民が歓喜する映像は、たとえ1個人の生命を奪う行為であっても、それが「テロとの戦い」という「正しい」目的のためには合理化されるという国際政治の冷徹な現実を、改めて私たちに見せつけました。その意味では、冒頭の醒め見方すらナイーヴなものに感じてしまうのは、私だけでしょうか(もはや「数の問題」ですらなく、理屈さえ通れば「容疑者」を問答無用で殺害することが「正義」として賞賛される!?)。「正しい戦争」は本当にあるのか、この難題を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

山本 英弘(やまもと ひでひろ)
「政治社会学」【政治社会学/市民社会論/社会運動論/政治過程論】

人々はそれぞれに価値や利益をもっています。このような人々が社会において円滑に共同生活を営むためにはルールが必要です。また、道路や学校、病院などの施設をつくったり、感染症を予防したり、1人ではできないことを協力して成し遂げる必要があります。政治とは、このような集団で生活するための決定を行なう仕組みだといえます。こうしてみると、政治は遠くの政治家がやっていることばかりではなく、我々の暮らしに身近なことがらとも関わることがわかります。それでは、社会についての決定は誰がどのように行っているのでしょうか?決まった事柄によって、人々はどのような影響を受けるのでしょうか?政治学を学びながら、遠そうで近い政治の世界について一緒に考えてみませんか。

演習テーマ・卒業論文タイトル抜粋(令和4年度)

  • アメリカ革命危機の免罪符「外敵への逃亡」
  • SNSにおける政治的表現と、その規制に関する考察
  • 新型コロナウイルス対策をめぐる中央地方関係の考察
  • 米中新冷戦と台湾問題
  • 冷戦下の東西ドイツ分断におけるアメリカとソ連の対立
  • アラブ諸国の情報統制とソーシャルメディア
  • 近代国家とホモ・サケル化する国際政治